大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和26年(あ)1767号 決定 1953年3月05日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人松岡益人の上告趣意第一点(1)は、判例違反を主張するが、本件被告人に対する予備的訴因(罰条)追加請求書記載の公訴事実第三(2)(記録五九〇丁)は、これを被告人に対する本来の起訴状記載の公訴事実第三(2)(記録一六丁)並びに第一審相被告人高野和美に対する起訴状記載の公訴事実の第十八(記録九丁)との関連において続むと、その内容は、被告人等が贈賄者側において昭和二三年度所得決定資料の蒐集調査に関し、好意的取計らいを受けたき趣旨で提供するものであるとの情を知りながら判示行為に及んだという意味を持つものであることが明かであり、この点に関する原判決の判示は正当である。所論判例は、公訴を提起するにつき犯罪の内容を知るに由なきものは、犯罪の事実の表示として不適法であり、その公訴提起の手続を無効であるとするのであって、本件とは前提を異にし、本件に適切でなく、同(2)は単なる訴訟法違反、同第二点は事実誤認の主張であって、いづれも刑訴四〇五条の上告理由に当らない(所論昭和二五年四月一七日附予備的訴因(罰条)追加請求書記載の公訴事実第三(2)は、被告人に対する昭和二四年四月二日附起訴状記載の公訴事実第三(2)に比し、公訴事実の日附、場所、人及び行為の内容等具体的事実関係をすべて同じくし、公訴事実の同一性を失はないものと認められるのであって右追加請求書は適法であり、この点に関する原判決の判断は正当である。また所論柴田杵子の検察官に対する供述調書は被告人側で証拠とすることに同意した書面であるから、その証拠能力につき特に刑訴三二六条一項の調査を行うや否やは裁判所の裁量に属するところであり、記録上右供述調書の供述の任意性に疑念を生ぜしめる節も見当らないので、第一審判決が右供述調書を証拠にしたことは適法であり、この点に関する原判示も正当である)。また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 真野 毅 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 岩松三郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例